日曜論壇6 「 地域循環こそ経済の基本 」 2002年4月7日
芳賀東小学校の六年生を送る会で、四年生が育てたきれいな鉢植えの花が、卒業生の
一 人一人に手渡された。
この花は、教頭先生の発案により、担任の先生と児童たちが「かれんに咲く花を卒業
生にプレゼントできるように」と、送る会に合わせて昨年から準備した。種をまき、
水をやり、気温や日当たりに気を配りながら、みんなの手で大切に育てたものであ
る。
花を育てた児童の心が、花を受けとる卒業生の心に届き、双方の児童達の心を同時に
はぐくむ、とても素晴らしい会となった。
式といえば先日、埼玉新都心の合同庁舎で農水省の環境保全型農業コンクールの表彰
式に臨んだ。私は卒業式さながらに胸に大きな花をつけ、優秀賞という栄誉に浴し
た。
私が代表を務める農事組合法人ドンカメは、夢と希望の地域循環システムの構築を進
めている。
芳賀町の公共施設や商店街、企業から出る生ごみ、一日当り一・ 五~二トンの有機質
資源をたい肥化して地域の農地に還元している。年間約五百トンの有機質資源が焼却
されることなく、農地の地力回復に使われ、農産物として循環する環境整備を実施し
ている。
全体の喜びを推進力として、自治体・ 農業・工業・商業と、地域住民を有機的につな
ぐことで資源が循環する。肥料の地域自給、食の循環による食料の地域自給や、魅力
ある地域としての人の循環が望まれるところだ。
ドンカメは、地域連携による資源循環の町、喜びが循環する町を実現したいと考え、
芳賀町が推進する、「環の町 芳賀」構想に参加しているのだ。
こういったシステムは実はとっても当たり前のことなのである。
「食は命をつなぐものである」という本来のあり方からかけ離れ、質と量とコストと
いう経済原理における「単なる物」として、私たちは食を扱っている。その意識が、
今、食の安全性を崩壊させる事態を招いているのだ。
最近の地産・地消も、おおむね一方通行のワンウェイ経済であるが、「地産・地消・
地環(地域循環)」が本来のあり方である。地域循環があって初めて「環」となり、
持続可能な社会環境となる。
やっかいもの(生ごみ)を宝(たい肥)に転換し、喜び(農産物)として循環する在
り方は、地域経済の確固たる基礎、基盤として、なくてはならぬ原理である。
地域の資源循環は、地域に密接した基本の関係で、地域の連携・流通・経済の再構築
に少なからずかかわるのだ。
中央経済が破綻状態だから、「地方経済を」と言っているのではない。本来地域経済
が基本である。その地域経済が、「何を根拠として機能しているのか」というところ
に、すべてが基因しているのであるから、そこを問題にしているのだ。
必要なことは、「どんな町に、どんな県に、どんな国に住みたいのか」を考えると見
えてくる。
もし現在の自分の姿と、自分の描くあるべき姿に落差があれば、その落差こそ努力し
てを埋め、夢と希望の実現に自らの尊厳を懸けて動く時ではないのだろうか。
芳賀東小学校の卒業生は心のこもった卒業式で送りだされ、夢と希望の中学生活を始
めることだろう。
地域としての栃木も、慣れ親しんだ環境からそろそろ卒業し、その軸を定め、夢と希
望を持って歩み出すときではないだろうか。